日本酒に含まれる代表的な有機酸は4つあります。
甘味はグルコース、旨味、苦味はアミノ酸、酸味は有機酸、辛みはアルコール
香り、口当たりなどすべて含めて日本酒の味わいを構成する要素になります。
その中で今回は有機酸について、どのような役割を持っているのか、味わいにどのように関係してくるのかを解説していきます。
日本酒の酸
普段、日本酒を飲んで酸っぱいと感じることは少ないと思います。
日本酒には有機酸が含まれていて、けっして目立ちませんが味わいに影響を及ぼしています。
また有機酸は酸味のみでなく、口当たりの濃淡、コクにも深く関係しています。
裏ラベルを見ると「酸度」と表記しているお酒があると思います。
酸度はどのくらいそのお酒に有機酸を含んでいるかの表示になります。本来表示義務はありませんが、お酒の特徴を表すため表記しているものもあります。
もし酸度表記しているお酒があったら、下記のサイトで日本酒度と酸度を入力して、そのお酒がどのようなタイプなのか調べてお酒の特徴をつかんでみてください。
参考:日本酒味わい計算サイト(甘辛・濃淡度計算)
◆代表的な有機酸は4つ
1.乳酸
2.コハク酸
3.リンゴ酸
4.クエン酸
個々の有機酸について解説します。
乳酸
含有する有機酸の中で一番多く、酸の70%を占める有機酸です。
一般的な製造方法の「速醸もと」ですと、醸造用の乳酸を使って酒母を作ります。雑菌の繁殖を防ぐため乳酸を使います。乳酸酸性にすると雑菌は繁殖しずらくなります。
「生酛系」の酒母は乳酸菌を繁殖させて、乳酸を生成します。やはり乳酸酸性にして雑菌の繁殖を防ぎます。
酸味は穏やかで、口当たりも厚みを感じる、少し重たい感じです。
あまり聞いたことがない名前かもしれませんが、燗酒にすると美味しく感じる要因といわれています。
味は苦渋、酸味は強くありません。
リンゴ酸
生酒などで「リンゴ酸高生産性酵母」を使用した日本酒で強く感じる酸です。
スッと鼻に抜けていくさわやかな酸味で、口当たりはちょっとザラつく感じが残ります。
尖った強い酸味で「白麹菌」から生成されます。焼酎を作るときに使用する麹で、日本酒ではあまり使用してこなかった麹でした。最近は日本酒でも「すっぱい日本酒」として白麹菌を混ぜて作っている日本酒も見られます。
レモンや梅干しを思わせる強い酸味です。口当たりはすっきりと軽く、さわやかな味です。
(醸造協会誌2011年第106巻第11号)J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/11/106_747/_pdf
◆有機酸と温度の関係について
日本酒の有機酸は、大きく冷旨系と温旨系に分けることができます。
・冷旨系はリンゴ酸、クエン酸
冷やして美味しく感じる有機酸
「リンゴ酸高生成」「クエン酸」などの表示があったら、冷やして飲むことをおすすめします。
冷旨系のリンゴ酸、クエン酸を感じる日本酒では、柑橘系の味わいのもの、黒酢を使った料理、ヨーグルトを使った料理などと合わせると相乗効果で更に美味しくなります。
・温旨系はコハク酸、乳酸
温めて美味しく感じる有機酸
生酛系の日本酒は乳酸やコハク酸を多く含んでいるので、お燗すると美味しくなります。しっかりとコクのある純米酒や本醸造酒もお燗に向いています。
お燗に向く日本酒は?
温めると味わいに変化をもたらすのは有機酸のみでなく、アミノ酸、甘味も美味しさに影響を与えます。
お燗に向く日本酒は、味がしっかり、どっしりしたタイプといわれます。
アミノ酸を多く含んだものは味がしっかりどっしりします。
アミノ酸は温度を上げるとやわらかい口当たりになっていきます。
温度が上昇すると、酸味も強く感じてきますが、アミノ酸によってマイルドに飲みやすくしてくれます。
最後に
日本酒は温度を変えるとそれまでとは違った表情を見せてくれます。
気分や食事に合わせて温度を変えてみると、新たな発見があるかもしれません。
温度で変わる日本酒の味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。